【02月13日UP】
今回は、子供にとっての住まいの役割についてお話しします。
<4つのキーワード>何枚かの写真を見ながら、そのときの子供の行動の意味や、その時の子供の気持ちなどを想像してみてください。
まだ7〜8ヶ月の歩けない二人です。夢中になって遊んでいた手を止めて、顔を上げるとそこにお母さんの笑顔。
前号でお話しした、「顔の見える範囲」での遊びです。
何か悲しいことでもあったのか、親から少し離れた部屋へ、お気に入りの手押し車を持ち込んでいた様子です。子供は、傷ついたりひどく疲労したときに、無意識に人々のまなざしから身を隠すことによって、安定を得ようとすることがあるそうです。大人の、「隠れ家にこもる」行為と似たところがあるようです。
ソファーの陰や、ちょっと身を隠せるようなコーナーなどは、大好きな場所であり、必要な場所でもあります。
積み木やブロック・ドミノなどを広げて遊べる空間があると、家の中での遊びも変化に富みます。また、翌日も続きが出来るようそのままにしておけると、何日もかけてやっと完成という達成感を味わう貴重な経験にもなります。
外遊びへ行けない時の、ベランダでのシャボン玉遊びです。
MSの10階からだと、空へではなく、一度地面へ向かって降りていき、低い建物の屋根を飛んで行く事もあります。庭や公園の時とは違った飛び方を楽しむ事ができ、風の流れの不思議も感じる事ができます。風向きによっては、窓から家の中へ飛んできます。「わー、お母さんの方へ行ったー。」と子供たちは大喜びです。
生後6ヶ月ぐらいから一緒に遊んでいたお友達との、緊迫した場面の3歳児の写真です。1つのおもちゃを使いたい子が2人、もう1人は間に挟まれ2人の顔を眺めています。子供といえども相手の気持ちを考えたり、自分の気持ちを表現したりという事ができるようになるためには、大切な成長過程の一場面です。
おじいちゃんにお茶を入れる、食器を片づける、洗濯をたたむ。お母さんと同じことをしてみたい、お手伝いをしたいという気持ちや、思いやりの気持ちを行動に移しやすいように、物の位置を決めてみてください。
その子の手が届き、出し入れしやすいような高さと広さにしておくと、片づけるお手伝いは無理なくできます。たたみ終わった衣類も、その子の引き出しを低い位置であけやすい物にしておくとスムーズに楽しくお手伝いができます。
おもちゃなどは、コーナーを一ヶ所決めて出し入れしやすく、分類しやすくしておく。たとえ部屋のイメージと合わないコーナーでも、自分の物の管理という意識が育つまで(上手に出来なくてもよいのです)は、是非子どものコーナーを用意してあげてください。
小学校に上がり、学校の物を管理するためには、学習机の周りがそういうコーナーになり、そのうち子ども部屋も必要になっていくでしょう。大変でしょうが、3歳ぐらいからの親の働きかけが、小学校に上がって忘れ物をしない子になり、その日に必要な物の用意、使用後の後片付けが出来るという事になっていきます。3年生ぐらいになると、親が声がけをするくらいで大丈夫になります。5〜6年生になっても忘れ物の理由を「お母さんが持たせてくれなかった」と言い訳する子がいるようですが、我が子をそうしない為にも是非物の管理という視点で、子どものコーナーを設けてみてください。
自分が家族に認められているという気持ち、家族に頼りにされている・必要にされているという感情を育てる事が大切です。家事の分担もお手伝いという意識から自分の仕事という意識に変わっていく事で責任感が育まれます。そのためには年齢にあわせたお手伝いがしやすいような家のつくりや、家具選び、家具の配置の工夫をしてください。
子どもの成長は、思った以上に速いものです。今危なっかしくてみていられなかったり、ついついやり直してしまいたい衝動に駆られても2〜3ヶ月もすると感心するような出来栄えになります。
子どもの為の家具は、見た目で惑わされることなく、使いやすさを重視した方がよいでしょう。子どもの成長や生活状況に合わせて、買い換えたり増やしていくことも考えられるでしょう。子育て中の家を生活しやすく変化させていく楽しみにもなります。
子どもはどんな環境であっても、そこに馴染もうとします。そして、その環境を土台として成長していきます。だからこそ大人の都合ばかりで考えず、この子が大人へと育っていくんだという視点で住まいづくりを考えてみてください。
完成品の環境ではなく、変化していく事が出来る環境(成長とともに変化させる事が出来る環境)を心がけたいものです。